知らない惑星のシュークリーム砂漠。
 

風が吹いて、夕方の青い絹が空から剥がれ落ちてくる。
 

 銀幕の向こう側で眠る。

 眠っている間は生きていなくてもいいんじゃないか。

シナモンの葉の淋しさ。
 

 普段からYouTubeで短い動画をたくさん観て耐性ができているから、予告編には誘惑されない。

 指がベトベトだとか、飲み物のフタが床に落ちたとか、映画館の中で起きる小さな問題をみんなが無言で解決している。

　「コートは映画が始まる前にコンパクトに畳んで膝にのせておかないと、あとで後悔するよね。」
 　

 週末にまた同じ映画を観ることにした。歌舞伎や野球、バレエ、同じ小屋に通う喜びに目覚めそう。

映画館でも眠ってしまえば、無意識からも吸収できるかもしれない。もったいないからしないけど。
 

「ストップメイキングセンス」、2週間で3回見た。サントラも毎日聴いている。どうか少しでも体に染み込みますように。
 

 「もう一度テーブルクロスのある生活？」

「茶色い食器は前世の事をおぼえている、イヤだねえ。」
 

ホラー映画を観る時は飲み物だって買いたくない。
 

3階でポップコーンとコーヒーを買って、5階の映画館までエスカレーターで持っていく間に2回ころびそうになった。
 

（鳥がリズム感がいいという話は聞かないと急に思った。）
 

「ストップメイキングセンス」の思い出に、ハサミの絵を壁に貼っておくことにした。

 

すみっこの灰色。
 

久しぶりに出してきた灰色の絵の具は固くなっていてペンチを使ってフタをあけた。
 

灰色が影じゃなくて光に見えるように気の持ちようを変えたい。
 

 絵の具の代わりに歯磨き粉を塗りたくったようなクリーンな灰色のスーツでデヴィッドバーンが歌う。天国では何も起こらない、それがこんなに楽しいなんてという歌詞を本当にデヴィッドバーンが歌っている。

トーキングヘッズの映画を観に行ってきた。デヴィッドバーンの灰色のスーツを見るだけでチケット代の値打ちがあった。 

 自分が入っている箱と同じ色の帽子を欲しがるひと。

 このスピードで描いていても絵を完成させることはできないなと思うことがたまにあるけれど、そのスピードは必ずしも遅いわけじゃない。描きたいものと描くスピードが釣り合わなければ、遅くても速くても全然ダメ。散歩の時の歩く速度と風景が釣り合わない感じに似ている。

 スピードと時間はどういう関係だろう。

 白い紙を切り刻んでも、お米か杏仁豆腐しか作れない。

「あなたが絵を描くのが遅いから、僕のお皿は3日も空っぽ。」

 

モチーフ台が食卓だというひと。
 

美術室のテーブルに載った不用品の山をみんなが絵に描いていた、世界中で。